アレルギー疾患について
何らかのきっかけにより、スギやヒノキなどの植物、ハウスダストなど特定の物質に対して過剰な免疫反応が起こってしまい、風邪でもないのに鼻の奥がムズムズしたり、繰り返し咳が出たりすることがあります。本来、私たちの身体には体内に侵入した細菌や微細なホコリなどを排除しようとする免疫機能が備わっています。しかし、ときには特定の抗原に対して免疫機能が過剰に反応してしまうことがあります。この反応によって引き起こされる病気をアレルギー疾患と呼んでいます。
アレルギー疾患には、幾つもの種類がありますが、特によく見られるのが花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーです。耳鼻科では主に花粉症とアレルギー性鼻炎の治療を行います。
- 主なアレルギー症状
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- 鼻の奥がムズムズする
- 透明でさらさらした鼻水が流れ出てきた
- くしゃみが止まらないことがある
- 鼻づまりで息が苦しい
- 喉がかゆい、イガイガする ・風邪でもないのに喉が痛い
- 繰り返し咳が出る、呼吸が困難になる
- 食事をしていても、味がよく分からなくなった
- 渇いた咳がよく出る
- 耳の中がかゆい、ムズムズする
など
- 耳鼻咽喉科で扱う主なアレルギー疾患と治療法
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- 花粉症
- アレルギー性鼻炎
- 舌下免疫療法
花粉症
花粉症は、特定の植物の花粉が鼻や口から体内に入り込むことにより、アレルギー反応を引き起こす病気です。くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、喉のイガイガ感などの不快症状が見られるようになり、日常生活に支障をきたすこともあります。
原因となる花粉としては、スギやヒノキがよく知られていますが、他にもハンノキ、ヨモギ、ブタクサ、アキノキリンソウなど約50種類あります。花粉が飛ぶ時期に限定され、愛知県の平野部では春先から初夏にかけてスギやヒノキによる花粉症に多くの方が悩まされています。一方、秋にはブタクサやヨモギが原因となるケースが見られます。
花粉症の治療に関しては、まずアレルギーの原因となっている花粉などを突き止め、これを避けるようにすることが重要です。具体的には、外出時にはマスクをつけること、帰宅時には洗顔や鼻の中の掃除などを徹底します。
このような手段によって花粉との接触を極力減らしたうえで、抗ヒスタミン薬を内服し、眼のかゆみ、くしゃみなどの症状を軽くします。なお、飲み続けていくうちに症状が収まり、自己判断で服用を中止される方もいますが、担当医師の指示通りきちんと飲み続けることが大切です。この他、スギ花粉による花粉症の場合は、「舌下免疫療法」も有効です。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、ハウスダストやイエダニのフン・死骸、ペットのフケ、壁や床のカビなどの原因物質を吸入することにより、抗原と抗体が鼻の粘膜で反応し、不快な症状が出現する疾患です。風邪とは異なり、通常は喉の痛みや発熱などを伴いません。
これらの原因物質によるアレルギー症状は、主に鼻と眼に現れます。なかでも、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが3大症状です。鼻の不快症状が続いている方は、一度、耳鼻咽喉科を受診して必要な検査を受けると良いでしょう。
血液検査や鼻汁好酸球検査などによってアレルギー性鼻炎であることが分かったときは、治療を進めます。抗アレルギー薬を内服したり、鼻スプレーを鼻腔内に噴霧することにより、不快な症状を抑えます。これと併行し、家庭などの居住環境を改善することも大切です。部屋の換気を良くし、こまめに掃除することでハウスダストやダニなどのアレルゲンを減らすことが出来ます。この他、ダニを原因とするアレルギー性鼻炎の場合は、「舌下免疫療法」も有効です。
舌下免疫療法
近年スギ花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎に対して治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場しました。この治療法は、アレルギー検査によってスギ抗体またはダニ抗体に陽性反応が見られた場合に保険適応されます。
具体的な治療は、スギ花粉やダニのアレルゲンから作られた錠剤を舌の下に置き定められた時間保持した後飲み込みます。アレルゲンを少しずつ体内に取り込んで慣らしていきアレルギーを和らげます。これを1日1回、数年間にわたって継続していきます。通院期間の推奨は3年以上です。開始当初は1週間に1回、症状が安定してきたら月に1回程度の診察を続けていきます。
舌下免疫療法の効果は約8割の方でアレルギー症状の改善が期待できます。残り2割の方では効果が少ない、出ないというデータもあります。
副作用として、口腔内の腫れ、軽い違和感、息切れなどが起こることもありますので、服用前後2時間程度は激しい運動、飲酒、入浴を避けていただく必要があります。なお、5歳未満の方、重症の喘息の方は舌下免疫療法を行うことが出来ません。がんや免疫疾患をお持ちの方、心疾患、肺疾患、重度の高血圧、抗うつ薬を使用されている方などは、検査と診察を行ったうえで判断させていただきます。